控室にて、野沢雅子共同GMと鹿志村社長が対峙している。

野沢「で、やるのかやらないのかはっきりしねぇか?まさか今更、出し惜しみって気じゃないだろうね」
鹿志村「…いえ、そんなことは…」
野沢「…そうだ、対戦相手の鹿野さんは次期ヤング黒うさ杯参加候補の一人に挙がったよ。
選手を大事に大事に扱っても、他の選手に先に行かれてしまっちゃあ、指導者としてどうなのかな?」
鹿志村「む……」
野沢「どんな形でも観客から評価を受ければ何かしらの機会は与えられるんだけどね」

鹿志村、しばし逡巡するも野沢雅子の威圧感に押され、契約書にサイン。

野沢「OK。じゃあ黒うさ杯の前に、華々しくいってみようじゃないか!」

共同GM、満足気な顔で退室。鹿志村は下を向いて何やら考え込んでいる。


庄子「社長!やらせてくれるんですよね?!私はいつでも大丈夫です!」
鹿志村「…庄子、そしてお前達。ここではっきりさせておくぞ。私はこの試合に乗り気ではなかった!」
クローバー全員「…ええぇ〜〜!??(何を今さら)」
鹿志村「以前、お前達で4wayの試合を組んだが、…まあおかしな連中に邪魔されたが…、
あれは我々の存在をアピールし、観客を虜にするいい策だったと思っている」
宮崎「じゃあなんで…」
鹿志村「考えてみたまえ!あれはラムズの穴から這い上がってきたお前達の様なアイドルだからこそ映えたのだ!…鹿野優以とやって、映えるのかね?」
井ノ上「…ああ」
( (‘ワ‘;)「社長、直球でひどいなあ」)
鹿志村「その上だ。リングを華やかにし、我々に注目を集めさせる為には試合の性質上…“負け”なければならん。
勝っても向こうに注目が集まる試合だ、こんな旨みの無い試合は組ませたくないのだ!…だが、状況が変わった。庄子!」
庄子「は、はい?!」
鹿志村「タッグフェスでは果たせなかったが、ヤング黒うさ杯はクローバーが若手選手トップだと知らしめるまたとないチャンスだ!
しかし、さすがの私でも全員を参加枠にはねじ込むことは出来ん。だから、鹿野優以の枠をこの試合で奪い取って来い!
出来るだけ注目を集めとった上で、だ!」
庄子「わ、分かりました…(また無茶な)」

谷山「Wellcome to the Saturday night VOW! イヤッハー!」
矢野「皆さんこんばんは。…やけに元気ですね。ただまあ、その気持ちも分からないわけではないですが」
谷山「おいおい、どれだけ待ったと思ってるんだ!俺のシュトゥーデルは爆発寸前だぜ!」
矢野「伏字になる前に放置しておきましょう。さて、これから行われる試合は、
『Bra & Panties match 庄子裕衣 VS 鹿野優以』です! 庄子選手が要望しながら、タッグフェス問題、
そして鹿志村社長の意向などが噂される中、これまで実現しなかった試合がようやく行われます!」
谷山「鹿野は次期ヤング黒うさ杯の参加選手候補に挙げられたらしいぜ!まさに上り調子だ!
だが、アゲアゲで行きたいのはクローバーも同じだ!若手から一歩先に行くのは黙っちゃいないだろうさ!
俺のゆっこと、ゆっこのパピーがな!!」
矢野「結局それですか。…気を取り直していきましょう。本日はゲスト・インタビュアーに選手控室に向かってもらってます。
ではまず、鹿野選手の控室へ向かったアシタヘ班のお二人、いかがですか?」

場面転換、鹿野控室

皆川「皆さん元気してますか?皆川純子です!」
広橋「広橋涼でーす」
皆川「なんだかこれまで待たされたねえ…。でも、優以ちゃんが公衆の面前で脱ぐなんて感慨深いわぁ」
広橋「純やん、負けてる負けてる」
鹿野「あのー…お二人とも、何をしに…(*´ ∀ `;)」

鹿野はいつもと異なるセパレートタイプの試合着。シンプルなデザイン。

広橋「はいはい、じゃあ調子はどうかな?
鹿野「ええはい、バッチリです!皆川さんには対策も基礎もきっちり教えられましたし、ヤン黒杯って目標もありますから!」
皆川「自身満々だね」
鹿野「勿論です!それに、ゆいの中のゆいになるには庄子に負けてられませんから!(*´ ∀ `)」
広橋「まだ言ってるのそれ;」
皆川「…えー、放送席放送席?とりあえず元気は有り余ってるようですよ」

場面転換、再度放送席に

谷山「優以はもっと気の利いた、男心を揺さぶる衣装を選ぶべきだな」
矢野「もっと別の感想を持ってくださいよ。では今度はクローバー控室へ向かった昌鹿野の“昌”、小野坂さーん?
……小野坂さん?」
(音声のみで)小野坂「…なんでやん!開かんやん!」
矢野「どうなされました?」
小野坂「関係者以外立ち入り禁止って、なんやこんな時に景気悪いなあ!」
谷山「これも焦らし戦法か!くぅ!憎いぜ俺のゆっこ!」
矢野「あなたのじゃありませんって。インタビューは聞けませんでしたが、試合は間もなくです。チャンネルはそのままで!」
〜CM〜

CM明け、入場待ちの鹿野、それに付いている小野坂。
小野坂「おうオマエ、向こうは景気悪いからな、オマエが気前良く脱いで景気良くしてこんかい!」
鹿野「ちょ、小野坂さん私の負け前提ですか; 大体こないだ、若手同士はクリーンな試合させろとか…」
小野坂「それはそれ、これはこれ。オマエは別や」
鹿野「なんですかそれ!…もう!心配しないでもちゃんとお客さんに喜んでもらえるようにしますよ!」
(小野坂「どうだかなあ…」)

少し離れて皆川と広橋、
広橋「あれ、國府田さんは試合見ていかないの?」
皆川「応援したいとは言ってくれたけど、やっぱりこういう試合は苦手なんだって」

『切情! 佰火繚乱』を背に鹿野入場。「頼むぞ鹿野!」となぜかクローバーのサインボードを掲げるファンから声が飛ぶ。

鹿野「なんだよもう!ちょっとは私のも期待してよ!(*´ ∀ `;)」

リングはいつもと異なる、ピンクを基調とした華やかな装飾がされている。
鹿野がリングに上がると、照明暗転。
場内にクローバーの新曲『Miracle EpisodeT』が鳴り響き、庄子入場。ガウンを羽織っており、衣装は見えない。セコンドは宮崎一人。

鹿野「待たせてくれたじゃない。さあ早く、私に脱がされる衣装を見せなさい!」
庄子がガウンを脱ぎ捨てると…上下にデニムを着込んだ姿が露になる。観客、大ブーイング。

鹿野「何よそれ!卑怯じゃない!」
庄子「衣装制限なんて要綱には無かったわよ。見逃したあなたのミスね」
鹿野「…あったまきた!私の方がすごいってはっきりさせてやるんだから!」

【Bra & Panties match】
庄子裕衣 VS 鹿野優以


庄子がセコンドの宮崎と視線を合わせた隙に飛び掛かる鹿野、二人が揉みくちゃになったところでゴング。
あっという間にキャットファイトの様相を見せる。
不意を突いた鹿野が体勢をコントロール。必死にもがく庄子だが、程なく上着に手が掛かり…
なんと、デニム生地を引き裂いて強引に脱衣させてみせた!
どよめきと、煽る口笛と、

谷山「いいぞ!もう少しだ!行け!!カモン、パピー、カモン!!」

解説になってない解説が湧き上がる。
鹿野はそのままトップスに手を掛けるが…

鹿野「…え?」

何故か一瞬躊躇する。庄子はその隙に鹿野を跳ね除け、膝を叩き込む。さらに、くの字になったところに肘を連続で落とす。
膝を付いた鹿野、庄子はその隙を逃さず背後から近づき…鹿野のトップスを剥ぎ取った!
おおぉ、と割れんばかりの…とは言えないが、声援が起こる。

谷山「優以の下着はおとなしいな。Bはまあ、あるのかもしれんが」
矢野「谷山さん、なんでそんな素なんですか!?ほらちょっと、ブr…」

庄子が鹿野を余裕の表情で見下ろす。
そして、何を思ったか自分のトップスに手を掛け、肩口の辺りを少し露出させてみせる。当然、観客からは歓喜のどよめき。
だが、肩口には青痣のようなものが見える。

庄子「これを見て、こんな痣を人前に晒させちゃうのを躊躇ったのよね…?優しいじゃない、あなた。…でもね」
鹿野「…?」
庄子「これは、フ・ェ・イ・ク」

庄子が青痣を一撫ですると、塗料が手に付く。セコンドの宮崎と共に、手を叩いて笑う。
これを観るとさすがに、ある意味庄子寄りだった声援が一転し、ブーイングに変わる。

庄子「悪いけど負けてられないのよね…。あなたにばかり注目を集めさせるのは癪だけど、すぐ終わらせてあげるわ!」

掴み掛かる庄子!
…しかし、気付いた時には庄子は仰向けになっていた。視界には仁王立ちの鹿野の姿。その手には穿いていた筈のボトム。
庄子はいつの間にか上下通常の試合着となっていた。一瞬のうちに、投げ飛ばされ、脱がされたというのか!

広橋「…今の、雪広流柔術?」
皆川「へー、よく盗んでみせたもんだね」

鹿野は追撃することなく腕を振るわせている。
鹿野「…がっかりした。私、同じ“ゆい”ってだからってだけじゃなくて、あなたのこと同世代の手強いライバルだと思ってた!
なのに、なんでそんな騙し討ちみたいなことするのよ!」
庄子「…いい子ぶってんじゃないわよ!あなただって若手トップを、上を目指して黒うさ杯に出ようとしてるんじゃない!」
鹿野「そうだよ!私だって上を目指したいよ!それでもまだまだだから、試合に出して貰える限りは全力でぶつかりに行くんじゃない!
あなたはどうしたかったの?ブラパン戦で、実力で、圧倒する姿を見せたかったんじゃなかったの?!」

うつむいて、考え込む庄子。
宮崎「ゆっこ、しっかりして!」
リング下の宮崎からも声が掛かる。その声に応じて宮崎に向き直り、一声掛ける。
庄子「羽衣…ゴメン、真面目にやるわ」

当惑する宮崎をよそに、庄子が大きく手を掲げ、手四つを要求。鹿野も笑みを浮かべ、それに応じる。
力に勝る庄子が押す展開となるが、鹿野が素早く切り返してヘッドロック。色んな意味で、きつく締め上げる。

庄子「…あんたのまな板じゃ、締め上げても注目されないみたいよ?」
鹿野「!…言ってくれるじゃない!」

鹿野はロックを解き、庄子をロープへ。返ってきたところに合わせ、昇龍裂天衝(アッパーブロウ )!
さらに庄子をコーナーへ押し込み、もはや捨て身のBカップスプラッシュ(コーナースプラッシュ )!

大技連被弾にややグロッギーの庄子だが、鹿野はまだ上下とも剥ぎに行かない。

広橋「…決着方法、本当に解ってるのかなあ」
皆川「解ってるだろうねえ」
小野坂「解っててやってるんやろなあ」
広橋「小野坂さん?」
小野坂「あいつなりに考えてやっとるんやな」

鹿野は庄子の動きを完全に止めんと、カノドリラー(ファイヤーサンダー )の体勢へ。
しかし庄子はすり抜けて、アトミックドロップ!そのまま強引にサーフボードストレッチ、さらにはロメロスペシャルの体勢に移行!
観客からは、ブラパン戦として以外の熱気も生まれつつある。

庄子「…これで、少しは大きく見えるんじゃない?」
鹿野「…ふ、ふざけんなー!」

鹿野が力任せに振りほどき、落下する。痛みを堪えて距離をとるが、庄子は走りこんでのラリアットで追撃。
しかし鹿野は、そこへ合わせて、直伝のアシタへストライク(スクリューハイキック )!!
相打ちで両者ダウン。起こる拍手と声援が、次第に普通の試合のものへと変わっていく。

鹿志村「何をやっているのだ庄子は!早く片を付けてしまわんか!」
井ノ上「…大丈夫ですよ、社長。ゆっこは、必ず勝ちますから」

先に起き上がったのは庄子。鹿野を引きずり起こして膝を一発叩き込むと、パワーボムの体勢へ。

矢野「これはまずいです!庄子選手のフィニッシュ、gift(高角度パワーボム )ですよ!」
谷山「おいおい、このまま終わっちゃあ、ゆっこのパピーが拝めないじゃないか!」

矢野「あんたは…」

高々と抱え上げられた鹿野、ウラカン・ラナで切り返しにいこうとするも、なんと庄子は抱え上げたまま旋回し、それを阻止!
そのまま旋回式のgiftで鹿野を沈める!
…静まり返る場内。そして歓声とどよめきが一気に広がる!
だが、その歓声に獣性が含まれていることに、庄子はまだ気付いていない。

宮崎「…ゆっこ…上…」
庄子「?…………ぃいやあぁぁぁぁぁ??!!!」

庄子のトップスはダウンしている鹿野の手の中に。切り返しの最中の揉みあいで掴まれていたのだ。

谷山「…パ、パ」
矢野「パピィィィィィィ!!」
谷山「ちょ、ま」
我先にとリングサイドへ走らんとする実況者二人。実況音声が途切れる、前代未聞の珍事。だが、
小野坂「やめんかボケ!」
何時の間にか観客席をすり抜けやってきた小野坂昌也がこれを制裁。実況席に引きずり戻す。
この間に、鹿野はなんとか起き上がる。観客からは双方へ「ゆい」コール。

Aice5控室
堀江「?なんだろ、呼ばれた気がしたような…」
浅野「気のせいでしょ」

リング上
(鹿野「さすがにきついや…もう…出し惜しみなんてしてられないな…」)
鹿野「これで対等…あと一枚…決め時ね、奥義、見せてあげる!」
庄子「やあぁぁ…って、な、何?」
鹿野「いくよ!奥義・黒龍モーニングデストロイヤー!」

腕を大きく振りかぶり、走りこむ鹿野。混乱していた庄子も咄嗟に身構える。

(庄子「こんなテレホンパンチ、避け、て、え、軌道、が」)
大きく弧を描くロシアンフックが庄子を薙ぎ払う!
直進に対して避けようとした庄子だったが、想定外の軌道に対し全く防御出来ず、派手にマットに転がってしまう。

宮崎「ゆっこ!起きて!」
宮崎の叫びも通じず、ダウンする庄子。それでも試合はまだ終わっていない。

鹿野が庄子を起こし…ボトムに手を掛け…首をかっ切るポーズ!そしてなんとパイルドライバー!
庄子をマットへ文字通り沈め、最後の一枚に手を掛ける。が、そこで突然ゴングが鳴った!

○庄子裕衣 (13分34秒) 鹿野優以●

鹿野「へ、ちょっと、なんで??(*´ ∀ `;)」
小野坂「まあオマエにしちゃよくやったと思うわ。でもな、そろそろ気付け」
鹿野「…???って脱げてるし?!」
小野坂「自分で同じことやり返されてどないすんねん!まったく詰めが甘いわ!」
パイルドライバーの際に同に回した庄子の手が鹿野のボトムを引きずり下ろしていたのだ。
だが、敗者となった鹿野に暖かい拍手が送られる。

鹿野「ちょっと!みんな!なんで、こう、もっと、煽るような口笛とかしないかな!」
小野坂「ええ加減にせえ!帰るぞ!」
小野坂が鹿野にジャケットを被せ、引き上げさせようとする。

鹿野「…はい(*´ ∀ `;)…あ、ちょっと待ってくれませんか?」
小野坂「なんや」
鹿野「その…そこのクローバーの二人も待って!」

庄子を抱えて引き上げようとする宮崎の足が止まる。

鹿野「観客のみんなも聞いて!…大山GM!野沢さん!私の話を聞いて下さい!」
唐突な要求に場内どよめく中…「やあぼくGM」と突然GMが現れる。

大山「頑張ったじゃないか鹿野くん。男性側の望むものにどこまで応えられたかは分からないけど…
でもなんだい?ご褒美が欲しいかい?君は既に黒うさ杯参加候補に入ったはずだけど…確定させろとでも?」
鹿野「その、ヤング黒うさ杯のことでお願いがあります!…庄子裕衣、どう思います?」
大山「??」
鹿野「彼女だけじゃなくて、そこにいる宮崎羽衣も、私と直前のスパーをしたばんばんも!若手にいい選手は沢山居るんです!
それでも、人気も実績も頭ひとつ抜けてる人はやっぱりいます。私なんかよりも、ずっと。
そういう人の参加が決まるのは当然です。それでも、私は敵味方関係なく色んな選手としのぎあいたい!皆に私達を見てもらいたい!
今日庄子とやって、そう思ったんです!
なんなら、私の枠があるなら、そこで3wayでも4wayでも、ランブル戦をやってもいいです!」
小野坂「おい、お前」
宮崎「鹿野、さん…」
大山「…ふふふ…本気かな…?」
鹿野「本気、です」
大山「実のところ、君はまだ確定ではないし、君より上位の候補も多いんだ。それでも、選考に悩んでるのも確かだしね。
…考えておこう。まずは、共同GMと話し合わなきゃね」

ありがとうございます、と深々と頭を下げる鹿野。GMは帰り際に小声で小野坂に話しかける。
(大山「ちゃんと育ってるじゃない。もしかしたら、反体制に回るのかと思ってたけど」)
(小野坂「…何が言いたいんですかね」)
(大山「褒めてるんだよ?ちゃんと成長を見守ってやりなないな」)
(小野坂「…狸」)

小野坂に肩を借りて花道を引き上げる鹿野。本隊・若手軍・広橋らに出迎えられたところで、放送終了。

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