暗いロッカールーム
控え室で一人、ビデオを見る人影
それは平野綾の姿だった……
平野「………」
その表情は明るくない
突然の急病で短期離脱をしてしまって以降、出番も減り試合すら中々組まれない状況
信頼できる仲間たちとの練習にも身が入らず、長く続くスランプに陥っていた…
平野(鹿野に、庄子……駄目だ、私だけ置いていかれている…)
頭を抱える平野
焦りは次第に彼女から持ち味だった元気を奪いトンネルを抜けるきっかけすら与えない…
平野(一体……どうすれば……)
彼女の悩みが頂点にまで達しようとしたその時……!

ガチャっ
鉄製のドアが開く無機質な音
廊下からの眩しい光が差して来る、そのドアの前にいたのは…
?「やぁやぁ、久しぶりだね」
平野「あ、あんたは……」

ドアの前に立っていたのはなんとのぶ代GMだった
驚きを隠せない彼女にGMはにこやかに話しかける
大山「おや、この私に向かってその口の効きかたはないだろう?」
平野「でも……なんで今更私なんかに……」
そう呟き、膝を抱える平野
平野「私は……もう……」
再び卑屈になる平野を見て肩をすくめるGM
見かねた彼女はお腹のポケットの中からあるものを取り出した
それは怪傑ゾロやポワトリンがつけていたようなマスク
だけど何故突然……

平野「………それは?」
大山「ふふふ、これは一つ良い機会だと思ってね」
大山「今日から君にマスクマンになってもらおうと思ってね」
平野「………!?」
あまりに突然の宣言に驚きを隠せない平野
しかしすぐに怒りはこみ上げてきて声を荒げてのぶ代GMを怒鳴りつける
平野「ば、馬鹿にしてるの!?」
平野「なんでそんな趣味の悪いマスクをつけなきゃいけないのよ!」
大山「趣味が悪い?そうかなあ、かっこいいと思うけどなあ」
平野「か、かっこいいわけがないじゃない!」
平野「それに私にはSOS団がある」
大山「ああ、勿論SOS団の平野綾としての活動は平行して続けてもいいから」
平野「そういう問題じゃない!」
額に青筋を立て怒りをあらわにする平野
GMはそんな平野を見てニヤニヤするばかり
大山「まあ、そんな怒らないで」
平野「……あんた喧嘩売ってるでしょ」
大山「馬鹿いわないで、むしろナイスでイカす提案だと思うけどね」
平野「話にならないわ……」
頭痛からか、頭を抱えロッカールームを去っていく平野
するとGMは手に持ったマスクをひらひらさせて平野に告げる
大山「もし……」
大山「もしもさ、君がそのマスクをつけて試合に挑む勇気があるのだとしたら」
平野「………?」
大山「構わないよ、君にチャンスをあげても」
平野「!?」
大山「当然君の努力次第ではあるけれど、ね」
平野「………」
思いがけない彼女の発言
しかしその目はさっきと打って変わって真剣だ
暫く続く重い沈黙
それを破ったのは平野だった

平野「………本当ね」
大山「ああ、GM嘘つかない」
笑顔で答えるGM
その言葉に二言はないようだ
立ち尽くし唇を噛む平野
そして決意を固めのぶ代GMに近づき……

平野「……いいわよ」
平野「やってやろうじゃない!」
平野「マスクマンだかマシュマロだかなんだか知らないけどやってやるわよ!」
平野「見てなさい、目にもの見せてやるんだから!」
のぶ代「ふふ、そうこなくっちゃ」
GMの手の中のマスクを分捕る平野
そんな平野の様子を見てGMは唇に笑みを浮かべる
のぶ代「じゃあ決まりだね」
平野「その代わり……」
平野「ちゃんと結果を出したらこんなヘンテコなマスク、二度と着けてやらないんだから」
のぶ代「それは終わってみてのお楽しみさ」
平野「ふん、これは契約なんだからね」
そう吐き捨て、ソファーに座りスポーツドリンクを飲む平野
しかし不機嫌そうながらもその表情には活気が戻っている
のぶ代はそれを見て一つ溜息をつくとポンと手を叩き、嬉しそうに呟く
のぶ代「やっとこれで適任者が見つかった」

のぶ代「………『天誅戦士ウマ仮面』の」

その名前に思わずスポーツドリンクを噴出す平野
そしてすぐさま彼女につっかかる
平野「な、何よ!その滅茶苦茶な名前!」
のぶ代「滅茶苦茶なもんか!寝ずに考えたんだぞ!」
平野「馬鹿じゃないの!そんなの考える暇があったらGMらしくソロバンでも弾いてなさい!」
のぶ代「む、言ったねー!まずはその言葉遣いから叩きなおしてやる!」
平野「おー、やってみなさいよ!」

ついさっきとは一転、ガヤガヤ騒がしくなるロッカールーム
二人の口げんかが延々と続く中、謎の人影がロッカールームの脇で様子を見守る
?「彼女を巧く丸め込むとは…」
?「さすが敏腕ゼネラルマネージャーといったところね」
そう呟き、謎の人影は一人笑みを浮かべ廊下を引き返す
?「ここまでは、計画通り……」
?「ふふふ……ふ、ふふふふふ……」
怪しい笑みを浮かべ闇に消えていく影
団体初のマスクマン。その登場に風雲急を告げるVOW
その裏に隠された真実とは………
それぞれの思惑を乗せ、うら若き乙女達の戦いは更に加速していく………!



のぶ代「で、これが衣装なんだけど」

平野「いやあああああああああああああ!!!!!」
………加速していく!

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